「面白いスマホゲーム」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。革新的なゲームシステム、魅力的なキャラクター、引き込まれるストーリー、美麗なグラフィック――。確かにこれらは「面白さ」を構成する重要な要素です。
しかし、私たちがそうしたゲームに出会い、触れることができる大前提として、「そのゲームの存在を知っている」という事実があります。
この「知ってもらう」というプロセスこそが、現代のスマホゲーム市場において最も過酷な競争であり、面白いゲームが世に出るための「必要条件」の一つが、リリース前の大規模な広告宣伝にあるのではないか、というのが本記事の主題です。
「面白さ」が届かない? 飽和する市場
スマートフォンのアプリストアには、非常に多くのゲームがラインナップされています。そして、年間にもたくさんのゲームが登場しています。管理人も今年は70個くらいの新作スマホゲームをプレイしてきました。その中で今も続けているのは5つだけあります。
多くのスマホゲームをプレイしてきて思ったのは、やはり面白いゲームにはある程度の共通点があります。それが、事前の認知段階でどれだけ広告をかけているかです。
広告をかけられる理由
もし、ある開発チームが「絶対に面白い」と確信するゲームを完成させたとしましょう。
そのゲームは絶対に売れると確信しているほど面白いのであれば、事前にお金を使って広告費用をかけるのは当然とも言えます。特にスマホゲームの開発企業・運営企業はほぼ現時点では限られています。ある程度の予算があるにもかかわらず、広告を渋るというのはあまり考えられません。
なぜ広告宣伝が「必要条件」なのか
1. スタートラインに立つための「入場券」
リリース前から大々的にCMを打ち、人気インフルエンサーを起用したり(最近だとアンベイルザ・ワールドは橋本環奈さんを広告塔としていました。しかし、個人的にはそこまでお金をかけているにもかかわらずアンベイルザ・ワールドはハズレゲームだと感じてしまいましたが)、SNSでキャンペーンを展開する――。こうした「お祭り感」の演出は、単なるお披露目ではありません。
これは、「私たちのゲームは、これだけの費用をかけてでも世に問う価値がある」という開発元の自信の表明であり、数多のライバルを押しのけてプレイヤーの可処分時間を奪うための「宣戦布告」です。
多額の広告費は、プレイヤーに「面白そう」という期待を抱かせるだけでなく、「これは話題のゲームだ」と認知させ、ダウンロードへの最初の障壁を突破させるための「入場券」として機能します。
2. 「盛り上がり」こそが面白さの一部
特にオンラインマルチプレイが主流の現代において、ゲームの「面白さ」は、ゲームシステム単体では完結しません。
- すぐにマッチングするプレイヤーの「数」
- SNSや攻略サイトで情報を交換できる「コミュニティ」
- サーバーの「活気」
これら全てがゲーム体験の「面白さ」に直結します。大規模な広告宣伝は、リリース直後に爆発的な数のプレイヤー(母集団)を集めることを可能にします。この「初速の盛り上がり」こそが、ゲームをさらに面白くする好循環を生み出すのです。
どんなに神がかったシステムでも、マッチングに5分かかり、SNSでも誰も話題にしていなければ、「面白い」と感じる前にプレイヤーは離脱してしまうでしょう。
「広告費=面白さ」ではない、しかし…
もちろん、多額の広告費をかけたゲームが全て面白いわけではありません。「広告に釣られてインストールしたが、中身は期待外れだった」という経験は、誰しも一度はあるはずです。管理人もそういった経験を今年も多くしました。
しかし、視点を変えれば、私たちが「面白い」と評価し、熱中している多くのヒット作は、その面白さがプレイヤーに伝わる「前」に、莫大な広告宣伝費というハードルをクリアしてきたゲームである、とも言えます。
ゲームのクオリティを磨き上げる「開発費」と、それをプレイヤーに届けるための「広告費」。現代のヒット作は、その両輪が噛み合って初めて生まれるのです。
まとめ
「面白いゲーム」が正当に評価されるためには、まずその存在を知ってもらわなければなりません。あまりにも競争が激しい現代市場において、十分な広告費用をかけて宣伝することは、ゲームの「面白さ」をプレイヤーに届けるための、残酷なまでに現実的な「必要条件」の一つと言えるでしょう。
私たちが今楽しんでいるそのゲームも、そうした激しい宣伝競争を勝ち抜いて、あなたと「出会う」ことができた作品なのです。
インフレ時代のゆるゆる生活 